人時生産性を上げる。

そう聞くと、

「もっと早く仕事をしよう」
「無駄な時間を減らそう」
「残業を減らそう」

という話を想像するかもしれません。

もちろん、それも大切です。

ただ、僕は人時生産性を上げることは、社員を急いで働かせることではないと思っています。

本当に考えるべきなのは、

「1時間あたりに生み出す価値をどう高めるか」

です。

これは、今まさに僕たちRICK自身が経営の中で向き合っているテーマでもあります。

人時生産性を「1時間あたりの価値」と考える

人時生産性には、業種や管理目的によってさまざまな算定方法があります。

僕たちは経営を考えるうえでは、シンプルに、

「1時間働いて、どれだけの価値を生み出せているか」

と捉えています。

ここで重要なのは、

「時間を減らす」

だけではないということです。

例えば、1時間かかっていた仕事を50分でできるようにする。

これも生産性向上です。

一方で、

1時間で1万円の価値しか生み出していなかった仕事を、同じ1時間で2万円、3万円の価値を生み出せる仕事に変える。

これも生産性向上です。

僕はむしろ、これからの時代はこちらの考え方がますます重要になると思っています。

僕たち自身、経営の軸を変えました

RICKも、これまで組織として成長してきました。

売上を伸ばす。
人を採用する。
組織を大きくする。

僕自身、成長や挑戦という言葉をすごく大切にしてきました。

ただ、組織が大きくなればなるほど、

「売上と人数を増やし続けることだけが、本当に良い成長なのか?」

と考えるようになりました。

売上が増えても、それ以上に労働時間が増えている。

人を採用しても、それ以上に管理コストが増えている。

社員が忙しくなり続けている。

それでは、持続可能な成長とは言えません。

そこで今、僕たちは経営を見る軸を、

「規模を大きくする」から「1時間あたりの価値を高める」へ

大きく変えています。

売上や人数を増やすことを否定しているわけではありません。

生産性を高めた結果として、必要であれば成長する。

順番を変えたということです。

生産性向上=効率化、ではない

人時生産性を高める方法はいくつもあります。

まず思いつくのが、効率化です。

AI。
DX。
業務標準化。
分業。
会議の短縮。
二重入力の廃止。

同じ価値をより短い時間で提供できれば、生産性は上がります。

でも、効率化だけでは限界があります。

10時間の仕事を8時間にすることはできても、永遠に時間を削り続けることはできません。

そこで必要になるのが、

提供している価値そのものを上げることです。

単価を上げることも、生産性向上の一つ

良いサービスを提供しているのに、価格が何年も変わっていない。

追加業務が増えているのに、料金はそのまま。

こうした会社は珍しくありません。

いくら業務効率を高めても、提供している価値に対して価格が低すぎれば、人時生産性には限界があります。

だから、

価格を適正化する。

これも立派な生産性向上です。

もちろん、ただ値段を上げればいいわけではありません。

価格以上の価値を提供する。

その覚悟とセットです。

「何をやるか」を変える

さらに重要なのが、仕事そのものを変えることです。

例えば会計事務所であれば、

入力する。
転記する。
資料を整える。

こうした仕事は、AIやテクノロジーによって今後さらに効率化されていきます。

そこで人が空いた時間を、

また別の入力作業で埋めるのか。

それとも、

経営者と話す。
課題を発見する。
財務を分析する。
将来をシミュレーションする。
意思決定を支援する。

より価値の高い仕事へ移していくのか。

ここで会社の未来は大きく変わると思っています。

AIは「人を減らす道具」ではなく「人の価値を高める道具」

僕は、AI導入の目的を単純な人員削減にしたくありません。

AIに任せられる仕事は、どんどんAIに任せる。

そして、人間は人間にしかできないことに時間を使う。

相手の表情を読む。

本音を引き出す。

複雑な状況を整理する。

何が本当の問題なのかを一緒に考える。

不安を抱えた経営者の隣で意思決定を支える。

こうした仕事には、まだまだ人間の大きな価値があります。

AIによって10時間の仕事が5時間になったなら、

残った5時間を、さらに価値の高い仕事へ振り向ける。

それが僕たちの考えるAI活用です。

顧客構成を変えるという選択肢もある

すべての仕事を引き受け続けることが、必ずしも正しいとは限りません。

自社の強みが生きる顧客。

自社のサービスを本当に必要としている顧客。

自社の価値を評価してくれる顧客。

そうしたお客様に、限られた時間をより多く使う。

逆に、非常に多くの時間がかかるにもかかわらず、自社の価値を十分に提供できていない仕事については、

業務方法を変える。
サービス範囲を変える。
価格を変える。

場合によっては、仕事そのものを見直す。

これも経営です。

生産性が上がれば、給与を上げる原資ができる

僕が人時生産性を重視する大きな理由の一つが、

社員の給与です。

社員の給与を継続的に上げるためには、原資が必要です。

「頑張っているから給与を上げたい」

という気持ちだけでは、会社経営は続きません。

1時間あたりに生み出す価値が上がる。

会社に利益が残る。

社員に還元できる。

優秀な人が集まる。

教育やAIに投資できる。

さらにサービスの質が上がる。

顧客にもっと大きな価値を提供できる。

僕たちが目指したいのは、この好循環です。

1時間あたりの価値は、4つの掛け算で考える

僕たちは今、

専門性 × 生産性 × 顧客への価値 × 組織への貢献

という視点を大切にしています。

専門性を磨く。

AIや仕組みを使って生産性を高める。

顧客に提供できる価値を大きくする。

そして、個人だけではなくチーム全体が強くなるように動く。

ただし、成長や組織への貢献を会社から無理やり求めるものにしたくはありません。

本当の成長は、

「もっとできるようになりたい」

と本人が思ったところから始まるものだと思っています。

会社は、その挑戦ができる環境をつくる。

それが経営側の役割です。

長時間働く会社から、価値の高い会社へ

これから人材採用は、さらに簡単ではなくなります。

人件費も上がっていくでしょう。

だからこそ、

「もっと働く」

によって成長する経営から、

「1時間の価値をもっと高める」

経営へ変えていかなければならないと思っています。

社員を急がせることが、生産性向上ではありません。

仕事を減らす。

仕組みを変える。

AIを使う。

価格を見直す。

サービスを変える。

専門性を高める。

そして、人にしかできない仕事へ時間を使う。

僕たち自身も、まだまだ試行錯誤の途中です。

でも、

顧客により大きな価値を届けながら、働く仲間もより豊かになれる会社をつくる。

そのために、人時生産性という数字と真剣に向き合っていきたいと思っています。

よくあるご質問

Q. 人時生産性を上げるには、まず何から始めればいいですか?

まず「誰が・どの顧客に・どの業務で・何時間使っているか」を把握することをおすすめします。感覚ではなく、実際の時間を測ることで改善すべき仕事が見えてきます。

Q. 人時生産性を上げると社員の負担が増えませんか?

時間削減だけを求めれば負担が増える可能性があります。重要なのは、不要な仕事を減らし、AIや仕組みを使い、より価値の高い仕事へ時間を移していくことです。

Q. 売上を伸ばすことと人時生産性はどちらが重要ですか?

どちらか一方ではありません。ただ、売上だけが増えて労働時間や人件費がそれ以上に増えている場合、持続的な成長とは言いにくくなります。売上とあわせて「1時間あたりの価値」を見ることが重要です。



監修:公認会計士・税理士 力丸 宣康

新日本有限責任監査法人を経て独立。現在、力丸公認会計士事務所所長、九州有限責任監査法人理事長。上場企業グループの社外監査役等を務めながら、中小企業の税務・会計・財務・経営支援に取り組む。

自身も会計事務所を経営する中で、生産性、価格戦略、AI活用、組織づくりなどの経営課題に取り組んでいる。