会社を経営していると、どうしても「成長」を意識します。

もっと売上を伸ばしたい。
もっと仲間を増やしたい。
もっとできることを増やしたい。

僕自身、ずっとそう思ってきました。

もともと「成長」とか「挑戦」という言葉が好きですし、会社をもっと良くしたい、もっと前に進めたいという気持ちは今も変わっていません。

ただ、組織が少しずつ大きくなっていく中で、最近よく考えるようになりました。

会社を大きくすることと、会社が良くなることは、本当に同じなのか。

売上が増えれば、会社は良くなると思っていた

売上を増やす。

仕事が増えたら人を採用する。

人が増えたら、さらに仕事を増やす。

会社を成長させるうえでは、とても自然な流れです。

僕たちも、そうやってここまで来ました。

でも実際に組織が大きくなってくると、それまで見えていなかったものが見えてきます。

売上は増えている。

でも、それ以上にみんなが忙しくなっている。

仲間は増えている。

でも、教育やコミュニケーション、管理に必要な時間も増えている。

お客様は増えている。

でも、一社一社にしっかり向き合う余裕が少なくなっている。

そんな状態になったとき、

「これって、本当に僕たちが目指していた成長なのかな」

と思うようになりました。

人を増やせば、会社が楽になるわけではない

仕事が増えれば、人を増やす。

これは必要なことです。

ただ、人を一人採用すれば、そのまま一人分会社が楽になるわけではありません。

新しい仲間には仕事を覚えてもらう必要があります。

役割を決める必要もある。

誰がどこまで判断するのかも決めなければならない。

人数が増えれば、コミュニケーションの量も増えていきます。

つまり、人が増えるということは、戦力が増えると同時に、

組織の複雑さも増えるということ。

これは僕自身、実際に組織をつくってきて強く感じるようになったことです。

だから、経営の軸を少し変えました

以前の僕は、

「もっと売上を伸ばしたい」

「もっと組織を大きくしたい」

という気持ちがかなり強かったと思います。

でも今は、

売上や人数よりも、「1時間あたりにどれだけ価値を生み出せているか」

を強く意識しています。

つまり、

規模拡大から、人時生産性へ。

もちろん、成長をやめるわけではありません。

むしろ、もっと良いサービスを提供したいし、社員にももっと還元したい。新しいことにも挑戦していきたい。

だからこそ、

ただ仕事量を増やして、人を増やして、また仕事を増やす。

という成長だけではなく、

今いる時間の中で、もっと大きな価値を生み出せる会社に変えていきたい。

そう考えるようになりました。

→ [人時生産性とは?社員を急がせず「1時間あたりの価値」を高める経営]

「もっと頑張る」ではなく、「構造を変える」

最近、僕がすごく大切にしている考え方があります。

それが、

努力して目標に近づくのではなく、目標を実現できる構造に変える。

ということです。

数字が足りない。

では、もっと頑張ろう。

もっと働こう。

もっと採用しよう。

もちろん、それが必要な場面もあります。

でも、同じやり方のまま努力量だけを増やしていくと、どこかで限界が来ます。

だから、

やらなくていい仕事は減らす。

AIに任せられる仕事は任せる。

サービスの内容を変える。

価格を見直す。

本当に価値を届けたいお客様に、もっと時間を使う。

そうやって、

会社そのものの構造を変える。

今の僕たちは、そこに挑戦しています。

大きくなることを否定したいわけではない

ここはすごく大事です。

僕は今でも、会社を成長させたいと思っています。

もっと良い仲間と働きたいし、もっと多くのお客様に価値を届けたい。

規模が大きくなることで、できることも増えます。

だから、

「小さい会社の方が良い」

という話ではありません。

僕が考えたいのは、

何のために大きくなるのか。

ということです。

売上を増やすことそのものが目的になる。

人数を増やすことそのものが目的になる。

そうなると、いつの間にか

「成長するために成長する」

状態になってしまいます。

それは違うと思っています。

僕にとって、成長とは「選択肢が増えること」

最近は、会社の成長を売上や社員数だけでは見なくなりました。

利益が残り、キャッシュにも余裕がある。

社員にもっと還元できる。

忙しさに追われず、お客様にしっかり向き合える。

良い人材がいれば採用できる。

新しいサービスやAIにも投資できる。

そして、

やる仕事も、やらない仕事も、自分たちで選べる。

僕は、こういう状態も大きな成長だと思っています。

逆に、

売上は伸びている。

社員数も増えている。

でも、ずっと忙しい。

採用し続けないと仕事が回らない。

資金繰りにも余裕がない。

断りたい仕事も断れない。

これでは、数字は大きくなっていても、

会社の自由度はむしろ小さくなっている

のかもしれません。

増やしたいのは、売上だけではなく「価値」

僕たちがこれから増やしたいのは、仕事量だけではありません。

お客様に届けられる価値そのものを増やしたい。

税務申告や決算を正確に行う。

それは当然大切です。

でも、それだけではなく、

経営者と話しながら課題を整理する。

数字から未来を考える。

必要ならシミュレーションする。

意思決定を一緒に考える。

そういう仕事に、もっと時間を使いたい。

同じ1時間でも、より大きな価値を届ける。

そして、その価値に見合った適正な価格をいただく。

→ [値上げは悪なのか?中小企業が「適正価格」を考えるべき理由]

そこで生まれた利益を、また人や教育、AI、新しいサービスへ投資する。

その結果、お客様への価値がさらに高まる。

僕たちは、そんな循環をつくりたいと思っています。

結局、「何のために成長するのか」

経営をしていると、

売上はいくらですか。

社員は何人ですか。

前年比何%ですか。

そんな数字で会社を見られることが多くあります。

もちろん、どれも大切な数字です。

でも、僕たちはその数字を大きくするためだけに会社を経営しているわけではありません。

どんな仲間と働きたいのか。

お客様にどんな価値を届けたいのか。

この会社を通じて何を実現したいのか。

結局、

「成長とは何か」を考えていくと、「何のためにこの会社をやっているのか」に戻ってくる。

そんな気がしています。

大きな会社ではなく、強くて良い会社へ

僕自身、まだ答えが出たわけではありません。

RICKも、今まさに試行錯誤しています。

これから売上はもっと伸びるかもしれない。

仲間も増えるかもしれない。

結果として、会社も大きくなるかもしれません。

でも、それはあくまで結果でいい。

僕がつくりたいのは、

ただ大きな会社ではなく、強くて良い会社です。

お客様にしっかり価値を届けられる。

働く仲間も豊かになれる。

そして、未来へ挑戦する余力がある。

そんな会社をつくりたい。

だから、

売上を伸ばすことも、

人を増やすことも、

会社を大きくすることも大切。

でも、その前に、

「僕たちは、何のために成長するのか。」

そこだけは忘れないようにしたいと思っています。

会社を大きくすることが成長なのではなく、

自分たちが目指す未来に、一歩ずつ近づいていくこと。

今は、それが僕の考える「成長」です。



売上は伸びている。でも、なぜか余裕がない。

もしそんな感覚があるなら、

努力が足りないのではなく、

会社の構造を見直すタイミング

なのかもしれません。

RICKでは、数字だけを見るのではなく、

「どんな会社をつくりたいのか」

というところから、経営者と一緒に考えることを大切にしています。



監修:公認会計士・税理士 力丸 宣康

新日本有限責任監査法人を経て独立。現在、力丸公認会計士事務所所長、九州有限責任監査法人理事長。中小企業の税務・会計・財務・経営支援に取り組む。

自身も事務所経営を通じて、規模拡大から人時生産性重視への転換、価格戦略、AI活用、組織づくりなどに取り組んでいる。